2011年10月04日

半年。



未曾有の大災害から、既に半年以上が経った。
当時ネパールから、インドを歩いていた僕は、得体の知れない自責の念に押されて、
旅を切り上げて帰国した。

遠くにいたから、現実感がない。
しかし、距離と疎外感は、冷たく硬い感触の記憶となって
より自分の心に迫ってくるものがあった。

東京で家族を安心させた後、遅い足どりで東北へと向う。
迷惑ではないか、無意味ではないか、微力に過ぎないか。
止まる理由を探しながらも、再び何か得体の知れない感情に押されて
僕は足を踏み出したのだ。

現実は圧倒的だった。
感情的になる自分を抑えるのに必死だった。
いつも笑顔で、瓦礫の山の中を歩いた。
おじいさんと、倒壊した家の中で結婚指輪を一緒に探した。
二度と電源が入らない冷蔵庫を、一心に拭いた。

多くの悲しみを感じ、多くの憤りを感じた。
気仙沼から大島へ渡るフェリーの中で、粉塵の舞い上がる
気仙沼港の風景を眺めていると、何時の間にか頬を涙が流れていた。
無意味な感傷に身を委ねたつもりはない。が、抗えない何かがあった。

全ての場所を感じることは出来ない。
ただ、気仙沼と気仙沼大島。この二つの場所とは、
僕という人間の一生という小さな時間の中で、関わって行こうと強く思った。

「偽善は嫌いだ」
そういって、阪神大震災のときに、何もしなかった自分がいた。
「偽善は悪ではない」
目に涙をためて彼女がそう言った時、
僕は東北に来てもよかったのだと、初めて思えたような気がしている。

北海道から帰って、新たな経験の鮮烈さで
彼の地への思いを、忘れかけているのではあるまいか。

大島の空を見上げた夢を見た。
まどろみの中で、その記憶を反芻し、僕はそう自らに問いかけた。

行動すること。見ることと、聞くこと。人と関わること、涙を流すこと。
大切なことを学んだ気がする。
僕はこれからも、正直に生きていきたいと思う。

また、大島へ渡りたい。







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Posted by Sinh at 12:08│Comments(0)雑記
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