2010年03月24日

春の知と愛。

春の陽気は、
風に吹かれて急速にその影を増してしまった。

桜という花がわざとらしく咲き始めるころ、
僕の春はもう終わってしまうのだ。

些細な風向きとその表情の変化に
一喜一憂していた金髪の少年も
長じて己が領分を区切り、
完成をはるか遠くに見ながらも、
賢くしてその城壁を作り上げてしまう。

経験のない小説は文学ではないと
言い切ることが誰に出来るのだろう。
きっとそれはヘッセにも断言できないほどの
無謀な戯言なのだ。

僕の春は、どうやら終わる。
春風が寂しく吹き荒れたあと、
疾風のような季節が訪れるだろう。

この不安定な精神状態が懐かしい。

巨大なる何者かが、浅薄でありながら深遠な何かを、
僕という存在の不明瞭な人間に成さしめようとしている。

その予感。

賽は投げられて、細胞は集団で自殺を始めた。
行き場を失ってじめじめと狂騒するレミングのように。

汝、若輩なるナルチスとなるか、老いたるゴルトムントとなるか。
春風は虚しさの中で常に問いかけてくる。

知か、愛か。
それは破滅への岐路と言っていいだろう。


※この煩悶の言葉の綴りを、偉大なる小説家へ捧げる。






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Posted by Sinh at 00:07│Comments(0)雑記
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